勿論、僕はなんの手伝いをするわけでもなく、羽織袴でただ
うろうろしているばかりであったが、それでもいい加減に疲れてしまった。
そこに隣家国枝さんとの境の垣に金紅色の蕾を寄り合わせ盛り合わせているぼけの枝は——だが、その蔭に
うろうろしていたのは可愛ゆいカナリヤの雛ではありませんでした。
とうぜんとっぴょうしもない出来事をおこさせるおどけ者の運命は、案外わたくしたちの身近に、
うろうろしているのだ。
甚作 新田の権が、昨日夕方裏の畑のところを、
うろうろしていたけに、あいつかも知れんぞ。
爺は、そんなことを言いながら、しばらく山茶花の木の下で、
うろうろしていた。
座談会の出席者は、討論の相手とマイクとどちらの方へ話しかけていいのか
うろうろ迷っているし、共産党員は威勢ばかりで懐疑のない声だ。
けれどまた、己惚れをすっかり失ってしまって、
うろうろすることも時にはある。
大学へ行かず本郷で
うろうろしていた二十六の時、スタンダールの「赤と黒」を読み、いきなり小説を書きだした。
ああして狂気の顔が、水に濡れたされこうべのように月の中へ浮んで、
うろうろ四辺を振り向いた様子は、この世からの外道ともいおうばかりだ。