待て、御典医であった、彼の
お祖父さんが選んだので、本名は杢之丞だそうである。
「
お祖父さんは、見ないから嘘だと思いなさるんですよ。
「これは、土がよくて、日がよく当たるから、早く大きくなったのだと、
お祖父さんがいっていらしたよ。
「私は、綾さん達の
お祖父さん(それは彼女の夫の前島宗兵衛です)に懲り懲りしたので、もう一生男は持つまいと決心したのです。
お祖父さんの墓参をかねて、九十九里へいってみようと思って……」
「この母方の
お祖父さんというのが面白い人だったんだそうですね。
そうすると黙ってそばに見ていた孫娘が急に老人の袖を引いて『
お祖父さん帰りましょうお宅へ、ね帰りましょう』と優しく言った。