そのむかしは御用木として日本堤に多く栽えられて、山谷がよいの若い男を忌
がらせたという漆の木の香いがここにも微かに残って、そこらには漆のまばらな森があった。
「それじゃ他人の聞きた
がらない音楽を金ずくで聞かせるのも悪趣味だよ。
その上二階にも一組宴会があるらしかったが、これも幸いと土地
がらに似ず騒がない。
いつも自働ピアノの前に立っては、場所
がらだけに多い学生の客に、無言の愛嬌を売っている。
それでは、圧迫に対してはどうかというと、これも指でつまむくらいでは、いくら強くしても痛
がらない。
昨日、一昨日、俺を不安
がらせた神秘から自由になったのだ。
やつと小学校へはひつた僕はすぐに「十郎が兄さんですよ」といひ、反つてみんなに笑はれたのを羞し
がらずにはゐられなかつた。