如月のはじめから三月の末へかけて、まだ
しっとりと春雨にならぬ間を、毎日のように風が続いた。
褄を高々と掲げて、膝で挟んだあたりから、紅が
しっとり垂れて、白い足くびを絡ったが、どうやら濡しょびれた不気味さに、そうして引上げたものらしい。
戸外の広場の一廓、総湯の前には、火の見の階子が、高く初冬の空を抽いて、そこに、うら枯れつつも、大樹の柳の、
しっとりと静に枝垂れたのは、「火事なんかありません。
京の夜露はもう
しっとりと降りてきて、肌の薄い二人は寒そうに小さい肩を擦り合ってあるき出した。
購買力を誇張しないだけでも、町びとの暮しが何となく
しっとりした素朴を保って行くことが出来るのであろう。
長つゆがようやく上がって、
しっとりと深い霧の降りた朝——ちょうど見まわり当番に当たっていたのは三宅平七以下四人の若侍たちでした。
暫く途絶えたかと思うとまた、静かな朝の深い霧の中から、夢色の
しっとりと淡白いその霧の幕をふるわせて、はげしく罵り合う声が聞えました。
手にとってみると
しっとりとしたしめりを含んでい、掌の上ですぐにも溶けてしまうような淡雪だった。
小暗い杉の下かげには落葉をたく煙がほの白く上って、
しっとりと湿った森の大気は木精のささやきも聞えそうな言いがたいしずけさを漂せた。