それにも拘らず、この気持は心の奥にまだ錬りきれずにゐるのであらう、机に向ふと、やはり愚劣な詩情を小説の中へ
しるしてゐることが多いのである。
こんな風な断りがきはしてゐるが、伝説の紹介ぶりは、証人の名をあげたり、御丁寧に地図まで載せて、決して「童子の為に」
しるしてゐるやうな様子ではないのである。
が、筆のついでに、座中の各自が、好、悪、その季節、花の名、声、人、鳥、虫などを書き
しるして、揃った処で、一……何某……好なものは、美人。
以下おぼろげに記憶を辿つて、私の足跡を
しるしてみよう。
「よかろう」研究班長の川波大尉は、実験方針書と
しるしてある仮綴の本を片手に掴みあげた。
わたしがいつでも通される横六畳の座敷には、そこに少しく不釣合いだと思われるような大きい立派な額がかけられて、額には草書で『報恩額』と筆太に
しるしてあった。
ごじぶんの都や御殿や御苑のことを、うつくしい筆で
しるしているのをよむのは、なるほどたのしいことでした。
わざわざ本名を
しるして、いま自分の前にあるきれいなページをよごすほどのことはない。
——その空想というのは実は笑うべきもので、ただ私を悩ました感情の強烈な力強さを示すために
しるすにすぎない。
〔パリのジャコバン倶楽部の遺趾に建てらるべき市場の門扉に
しるすために作られた四行詩〕