その穂は僕等の来た時にはまだ
すっかり出揃わなかった。
「延子をなくしてから父上は
すっかり老い込んでおしまいになった。
しかしこれは咳が癒ったのではなくて、咳をするための腹の筋肉が
すっかり疲れ切ってしまったからで、彼らが咳をするのを肯じなくなってしまったかららしい。
長「おう、違えねえ、こりゃアどうも、
すっかり忘れちまッた、カラどうも大御無沙汰になっちまって体裁が悪いんでね、こんな処え来てしまったんで、誠にどうもツイ…」
なんでも、かなり長いものであったが、おきのどくなことには今は
すっかり忘れてしまった。
恩給だけでともかくも暮らせるなら、それをありがたく頂戴して、
すっかり欲から離れて、その日その日を一家むつまじく楽しく暮らすのがあたりまえだ。