武田さんが死んでしまった今日、もうその真偽を
ただすすべもないが、しかし、武田さんともあろう人が本当にあった話をそのまま淡い味の私小説にする筈がないと思った。
焼け跡の区画整理は片付いて邦原君一家は旧宅地へ立ち戻って来たので、知人や出入りの者などについて心あたりを一々聞き
ただしてみたが、誰も届けた者はないという。
このように些か感傷の痕をとどめた文体は気になる点が多いのだけれども、敢て気のついた誤植を
ただすほか、一切文章に手を加えないでもとのままに止めた。
薩摩なまり、東北なまり、茨城弁など、数多の看守が立ちかわり入れかわり、同じようなことを幾度となく聞き
ただしては手帳につけて行く。