中でもこの私
なぞは、大殿様にも二十年来御奉公申して居りましたが、それでさへ、あのやうな凄じい見物に出遇つた事は、ついぞ又となかつた位でございます。
あるいはまた一晩中、秦淮あたりの酒家の卓子に、酒を飲み明かすこと
なぞもある。
おれでさえこのくらいだから、お前
なぞが遇って見ろ。
電車はその時神保町の通りを走っていたのだから、無論海の景色
なぞが映る道理はない。
そうして、修学旅行で宿屋へでも泊る晩
なぞには、それを得意になって披露する。
まして柑子色の帽子や、椎鈍の法衣
なぞは、見慣れているだけに、有れども無きが如くである。
中でもこの私
なぞは、大殿樣にも二十年來御奉公申して居りましたが、それでさへ、あのやうな凄じい見物に出遇つた事は、ついぞ又となかつた位でございます。