わたしは勿論振りか
へらずにさつさと足を早めつゞけた、湿気を孕んだ一陣の風のわたしを送るのを感じながら。
故に愛のためにせむか、他に与
へらるゝものは、難といへども、苦といへども、喜んで、甘じて、これを享く。
理髮師の源助さんが四年振で來たといふ噂が、何か重大な事件でも起つた樣に、口から口に傳
へられて、其午後のうちに村中に響き渡つた。
しかしこれさへ、座敷の中のうすら寒い沈黙に抑
へられて、枕頭の香のかすかな匂を、擾す程の声も立てない。
この賊徒の招安に關して、歴史上種々の笑話が傳
へられて居る。
福建地方で古來尤も勢力を有する、林・黄・陳・鄭の所謂四姓も、晉室南渡の頃に、北支那から茲に移住し來て、藝文儒術の萌芽を扶植したと傳
へられて居る。
先々代の家が隆盛の頂にあつた時裏の欅山を坊主にして普請したこの家の棟上式の賑ひは近所の老人達の話柄になつて今も猶ほ傳
へられてゐる。
肉体の欲に※きて、とこしへに精神の愛に飢ゑたる放縦生活の悲愁ここに湛
へられ、或は空想の泡沫に帰するを哀みて、真理の捉へ難きに憧がるる哲人の愁思もほのめかさる。
「都へとおもふもものゝかなしきはか
へらぬ人のあればなりけり」。