ゆくりなく今度の配給で、すこしも配給らしくない好物を味はふことが出来た。
役人はこわい者、機嫌を取っておかぬと後の祟りが恐ろしいという、そうしたその時代の百姓心理を、
ゆくりなく初日から示したのであった。
倖にも、其前年六月に、山籠りした世阿弥の弟子の禅竹は、
ゆくりなくも命婦ら一部の、漂浪の痕を辿るべき書き物(禅竹文正応仁記)を残して置いてくれた。
ゆくりなく発した言語詞章は、即座に影を消したのである。
——私は昔自分の作つた歌を
ゆくりなく旅先で聴く様な気がした。
此音を耳にして、われは、
ゆくりなくも、旧き記憶をよびおこして、回想の忘れ路をたどりぬ。
ゆくりなくもまた辰のことを思い出したとみえて、ほろりと鼻をつまらせると、初鳴りに鳴りはじめました。
そこに私は
ゆくりなく慎ましい美を発見するのでございます。
ゆくりなく目を注ぎたるかの二階の一間に、辰弥はまたあるものを認めぬ。