若い松ヶ谷学士は、
全身に興奮を乗せて躍りこむように所長室にすべりこんだ。
全身に数千本の針を突き立てられたような刺戟、それは恰も、胃袋の辺に大穴が明いて、心臓へグザッと突入したような思いだった。
彼はその威圧を意識すると、
全身の力をもって反発せねばならぬと思った。
今夜こそ、もし何かあったら、それこそ彼は
全身の勇を奮って、西風に乗ってくる妖魔と闘うつもりだった。
若い農夫は、一時に
全身の血の湧き上がって来るのを感じた。
飛んでゐる時は勿論、とまつてゐる時も溢るる精気に絶えず
全身を小刻みにキビキビ動かし続けてやまない。
人間も、そこでは、自然と、山の刺戟に血が
全身の血管に躍るのだった。
旅僧は年紀四十二三、
全身黒く痩せて、鼻隆く、眉濃く、耳許より頤、頤より鼻の下まで、短き髭は斑に生ひたり。
美々しく銀モールで刺繍をした赤い立襟や佩剣などが、もう眼の前にちらついて……彼は
全身ブルブルとふるえだした。
今ははげしい汗疣が、背から胸、胸から太股と
全身にかけて皮膚を犯していた。