最も一度、私の軍艦では、ナイフで腹を
切つたのがゐたさうですが、これは死に
切れない中に、発見されて命だけはとりとめたと云ふ事でした。
黒い髪をむすんでうしろに垂れて、浅黄無地に大小の巴を染め出した麻の筒袖に、土器色の短い
切袴をはいていた。
双肌脱いだ儘仰向に寝転んでゐると、明放した二階の窓から向ひの氷屋の旗と乾き
切つた瓦屋根と真白い綿を積み重ねた様な夏の雲とが見えた。
が、今ではそんな事も考へない程、この非凡な講義を聴く可く余儀なくされた運命に、すつかり黙従し
切つてゐた。
乞食は髪の水を
切つたり、顔の滴を拭つたりしながら、小声に猫の名前を呼んだ。