(遠い路だ——)仰ぐと、夜空を四角に
切り抜いたようなツルマキ・アパートが、あたりの低い廂をもった長家の上に超然と聳えていた。
最も大きな苦難が眼の前に迫つてゐることを自覚し、この苦難を
切り抜けることが勝利の第一歩であることを、誰に云はれなくても肝に銘じてゐる。
私はその書が好きで、
切り抜いて置いて熱心に習つたものであつた。
見上げると、もう橋の上には鮮かな入日の光が消えて、ただ、石の橋欄ばかりが、ほのかに青んだ暮方の空を、黒々と正しく
切り抜いている。
ただ新聞記者の業に在る者潜心校閲の暇なく、新聞紙を
切り抜きたるままこれを植字に付したるは醜を掩うあたわざるゆえんなり。
煙草入のかますから、前夜隣家から借りて
切り抜いて取っておいた新聞の一片——そこには無論、昨日の勝負が掲載されてあった——を引き出して、彼は熱心に眺め入った。
私はこれをきき、そしていま、単身よく障碍を
切り抜けて、折角名人位挑戦者になりながら、病身ゆえに惨敗した神田八段の胸中を想って、暗然とした。
ともに苦しみともに堪えて、この世を
切り抜けよと、お験しになったにちがいありません——と。