探偵小説は、これを食物に譬えるならば、一種の
刺戟剤であって、「わさび」や「しょうが」を何故好きかと問われても一寸返答に困ると同じである。
私どもの知識欲は、この荘厳にして視神経を
刺戟する程度の強さが、容積の大から来るそれに匹敵する山岳に対して、もう少し、微細に深刻に入って見たい。
その中にも山頂に落ちた白雪は、私の神経を
刺戟することにおいて、幾百反歩の雑木林の動揺と、叫喚とにも、勝っている。
そのまた嗅覚の
刺戟なるものも都会に住んでいる悲しさには悪臭と呼ばれる匂ばかりである。
ただ、咄嗟の際にも私の神経を
刺戟したのは、彼の左の手の指が一本欠けている事だった。
勿論この怖れは、一方絶えず、外界の
刺戟から来るいら立たしさに、かき消された。
最後に自分は、常に自分を
刺戟し鼓舞してくれる「新思潮」の同人に対して、改めて感謝の意を表したいと思う。
奇怪な実在をつかんで発狂することのないように、彼はあらかじめあらゆる想像をたくましうして今ふれんとする世界からの
刺戟にそなえたのであった。
彼は血の痰を見てももうなんの
刺戟でもなくなっていた。
久しぶりに接した外界の激しい
刺戟と、慣れない汽車の旅に心身ともに疲れはてていたのである。