半襟はその頃はまだ無地のちりめんは、少女用の緋ぢりめん桃いろちりめんのほかはなく、みんな多少とも
刺繍がしてあり、白襟にまでぬひがあつた。
五ヶ国語を話してトーマス・クックの案内人を勤める伊太利男爵もあれば
刺繍とピアノを教へる嫁入学校を拵へて一儲けする波蘭伯爵もある。
銀の縁のある帽子をかぶり、
刺繍のある胴衣を着、膝ぎりしかないズボンをはいている。
そのマントルの代りには、この赤いマントルをやろう、これには
刺繍の縁もついている。
この雨は間もなく霽れて、庭も山も青き天鵞絨に蝶花の
刺繍ある霞を落した。
赫耀たる草や木や、孔雀の尾を宇宙に翳し、羅に尚ほ玉蟲の光を鏤むれば、松葉牡丹に青蜥蜴の潛むも、
刺繍の帶にして、驕れる貴女の裝を見る。
天地※※に手拭を斜つかひに突張つて、背中を洗つて居たのは、
刺繍のしなびた四十五六の職人であつた。
美々しく銀モールで
刺繍をした赤い立襟や佩剣などが、もう眼の前にちらついて……彼は全身ブルブルとふるえだした。
一方、新造や娘たちは
刺繍のある手布で口ばたを拭つて、再び自分たちの列から前へ進み出た。