わしは、お
前さんの道楽で長い間、苦しまされたのだから、後に残る宗太郎やおみね(私の父と母)だけには、この苦労はさせたくない。
それともお
前さんの店では暖簾の上に、嘘を書いて置いたつもりなのですか?」
「嘘をおつきよ、お
前さんは此の頃毎日そんなことを云っているんだもの。
広も可哀さうだし、お
前さんも気兼だし、第一わしの気骨の折れることせつたら、ちつとやそつとぢやなからうわね。
かね「あらまア本当に有難う存じます、何処へ参りましたかと存じて心配して居ましたが、御親切に有難う存じます…お
前さん直に往って連れて来ておくれよ」
梅「あらまア御免遊ばせ酔って居りますから、お
前さん何と云う事だよ、お武家様を番太郎の家などへお上げ申す事が出来ますものかね」
何という大泥棒だろう! 私はもう三人のお客さんから、お
前さんが顔をあたる時、今にもちぎれそうになるほど鼻をひっぱるって聞かされているよ。