戦後の「雨」「晩菊」「浮雲」など、
前期の林さんのもたなかった思想性をもちはじめている。
「上の女房」と言はれたものは、言ふまでもなく、宮廷の官女はすべて、
前期王朝には、神の摂政たる主上に仕へる巫女であつた。
前期王朝までは、「つくゑ」と言ふ語で表し、後期王朝に入つて、台盤と言ふ語も出来て、一人用から多人数用の物までも含んで居る。
一口に云へば、
前期の諸作は、主題として所謂「劇的境遇」が選ばれてをり、後期の諸作は、少くとも表面的に「波瀾の少い場面」が選ばれてゐる。
ただ同君の
前期の仕事に抑々亦少からぬ衝動を世に与えて居ったという事を日比感じて居りましたまま、かく申ます。
しかし後期のものがすべての点において
前期のものにまさっているとはいえない。