私が今話の序開をしたその飛騨の山越をやった時の、麓の茶屋で一緒になった富山の売薬という奴あ、けたいの悪い、ねじねじした
厭な壮佼で。
義太郎 (駄々をこねるように)
厭やあ、面白いことがありよるんやもの。
するとSもその瞬間に僕の気もちを感じたと見え、
厭な顔をして黙ってしまった。
女中はそれでも
厭な顔をせずに、両手にコップを持ちながら、まめに階段を上り下りした。
「泥棒?
厭あな小母さん! そんな職業があるの? 泥棒だなんて……」
血まみれになって働く穢さよりも、あの無邪気な生き物を殺すのが
厭だった。
それと同じ様に、自分の周囲の総ての関係が、亦時として何の脈絡も無い、唯浅猿しく
厭はしい姿に見える。
猶太人はこの女を亜鉛に金めつきをした
厭な人形の中に交ぜて置いたのである。