向こうはくれくれいうてせがんどったんやけれどものう。
菊枝は身体を投げ出したまま、背負っている草の上に、ぐったりとなって、荷縄も解かずに、
向こう鉢巻きにしていた手拭いを取って顔や襟首の汗を拭った。
「人間てがらを重ねておくと、こういう堀り出し者が、ひとりでに
向こうから集まってくるんだから、ありがたいこっちゃござんせんか。
「なに、天竺……? 天竺と申せば唐の
向こうの国じゃが、どなたにそのような知恵をつけられました」
ひらりと乗ると、馬はあしげの逸物、手綱さばきは八条流、みるみるうちに、右門の姿は、深い霧を縫いながらお馬場をまっすぐ
向こうへ矢のように遠のきました。
三本めの桜の横をだらだらと
向こうへ降りながら、まもなく相合いがさのふたりが訪れたところは、ひと目にどこかの寮とおぼしきしゃれたひと構えです。
昼間は金毛の兎が遊んでいるように見える谿
向こうの枯萱山が、夜になると黒ぐろとした畏怖に変わった。
その時もその子供だけは遊びの仲間からはずれて、配達車に身をもたせながら、つくねんと皆んなが道の
向こう側でおもしろそうに遊んでいるのを眺めていたのだろう。
向こうのすみでは、原君や小野君が机の上に塩せんべいの袋をひろげてせっせと数を勘定している。
と思うとまた、
向こうに日を浴びている漁夫の翁も、あいかわらず網をつくろうのに余念がない。