目はその間も額縁に入れた机の上の玉葱だの、繃帯をした少女の顔だの、芋畑の
向うに連った監獄の壁だのを眺めながら。
曖昧と云えば浪の
向うも靄のおりているせいか、甚だ曖昧を極めている。
すると看守は横を向いたまま、僕の言葉を聞かないうちにさっさと
向うへ行ってしまった。
ひそかに死骸を抜け出すと、ほのかに明るんだ空の
向うへ、まるで水の※や藻の※が音もなく川から立ち昇るように、うらうらと高く昇ってしまった。
そこで内供は弟子の一人を膳の
向うへ坐らせて、飯を食う間中、広さ一寸長さ二尺ばかりの板で、鼻を持上げていて貰う事にした。
札幌ビールの煉瓦壁のつきる所から、土手の上をずっと
向うまで、煤けた、うす白いものが、重そうにつづいているのは、丁度、今が盛りの桜である。
しかし僕はO君と一しよに両国橋を渡りながら、大川の
向うに立ち並んだ無数のバラツクを眺めた時には実際烈しい流転の相に驚かない訣には行かなかつた。
豊田君は「ぢやようござんす」と云つて、悠然と
向うへ行つてしまつた。
僕は冬の西日の当つた
向うの松山を眺めながら、善い加減に調子を合せてゐた。