その人影は帆村荘六の醒めきらぬ眼にハッキリした印象をのこさなかったが、
和服を纏った長身の男らしく思われた。
お志万は丸ぽちゃの色白の娘で
和服好み、襟元はかたくしめているが、奥から覗く赤い半襟がよく似合う。
尤も残花と私とは
和服の着流しであつたが、坪内君だけは洋服で、一見先生らしかつた。
賢一郎、役所から帰って
和服に着替えたばかりと見え、寛いで新聞を読んでいる。
重吉はこの茶の間へはいると、洋服を
和服に着換えた上、楽々と長火鉢の前に坐り、安い葉巻を吹かしたり、今年やっと小学校にはいった一人息子の武夫をからかったりした。
風の日の外出には髪の網のやうに、褄止めの簡単な工夫が出来たら、もつと
和服の着用者も颯々たる風を愛するやうになるだらう。
「ハア、お出で御座います、貴様は?」と片眼の細顔の、
和服を着た受付が丁寧に言った。
一しよに角帽を並べて、法文科の古い煉瓦造の中へはいつたら、玄関の掲示場の前に、又
和服の松岡がゐた。
和服も上等ではなかったが、時候に相当した物を、一二着宛調えて行く事が出来た。