二三日前、俺は、ここの渓へ下りて、石の上を伝ひ歩
きしてゐた。
彼女は灰の上を転げ回り、灰の中にもぐり込み、そして羽をいっぱいに膨らましながら、激しく一羽搏
きして、夜ついた蚤を振い落す。
たちまち姉は優しく妹の耳に口寄せて何事かささや
きしが、その手をとりて引き立つれば妹はわれを見て笑みつ、さて二人は唄うこともとのごとくにしてかなたに去りぬ。
酒を早くと言ひお
きしが、二人水より上り來りし頃には、酒至る。
女すこしばかり嘔
きしが、遂にえ堪へで、横臥せる男の脛を枕にして臥す。
降りつゞ
きし雨、路上に微泥をとゞめて、空さりげなく、片雲だになき好天氣、日影ほか/\と暖きに、醉さへ加はりて、陶然として歩す。