前髪を落したからは
大人の仲間入りをしろと、兄弟子や友達にすすめられて、六三郎はその年の夏に初めて新屋敷の福島屋へ足を踏み込んだ。
彼の妹は妹と云っても、彼よりもずっと
大人じみていた。
年は十五とか十六とか云うが、見た所はもっと
大人らしい。
すると、見物の方では、子供だと、始から手を拍って、面白がるが、
大人は、容易に感心したような顔を見せない。
大人達のチャセゴは、軒々を一軒ごとに廻るのではなく、部落内の、または隣部落の地主とか素封家とかの歳祝いの家を目がけて蝟集するのであった。
自分が嗽に立って台所へ出た時、奈々子は姉なるものの
大人下駄をはいて、外へ出ようとするところであった。
女手がなくなって、お君は早くから一人前の
大人並みに家の切りまわしをした。
その内に姫君も何時の間にか、
大人寂びた美しさを具へ出した。
この特質は成長するとともにだんだん強くなり、
大人になってからは自分の主な楽しみの源泉の一つとなったのであった。