ことに心臓が可なりに衰弱して居て、一日も早く
妊娠を中絶しなければ、母体がとても分娩まで持つまいと思われました。
現に二人の孫を失うと殆ど同時に、あたかもそれを取りかえすようにチヨは
妊娠してくれた。
ところが皮肉なことに、健吉くんを養子とした翌年、夫人が
妊娠して保一くんを産み、さらにその二年後きよ子嬢を産みました。
驚いて口をはなし、手で柔く押えると、それでも痛いという、血がにじんでも痛いとは言わなかった女だったのに、
妊娠したのかと乳首を見たが黒くもない。
すると、ややあって妹は膝をのりだし、兄さん京都の姉はまた
妊娠したのだそうです。
いろいろ思い案じた挙句、今の内にお君と結婚すれば、たとえ
妊娠しているにしても構わないわけだと気がつき、ほッとした。
なんじいかに奇矯の言をなして婦人の天職を皆無に帰せしめんと欲するも、
妊娠、分娩、育児のことに至っては、ついにこれを婦人の天職にあらずと言うをえざらんと。