世間にては、
妖怪と申すとその字から想像を下して、単におばけか幽霊のようなものに限るごとく考え、あるいは狐狸の所為に関係した事実ばかりのように考えておりまする。
さて、
妖怪と申しますると、なにか幽霊かのように思われますが、決して一つや二つのものではありませぬ。
尤も狐狸
妖怪といって、
妖怪の或るものは多く狐狸その他のけものの神通力によって変幻する現象とされてある事もある。
成経は成経で、
妖怪に憑かれたような、きょとんとした目付きで、晴れた大空を、あてどもなく見ながら、溜息ばかりついている。
両国の野天講釈や祭文で聞きおぼえた宮本無三四や岩見重太郎や、それらの武勇譚が彼の若い血を燃やして、清水山の
妖怪探索を思い立たせた。
死に神か通り魔か、狐か狸か、なにかの
妖怪が自分に付きまつわって来るのではないかと思うと、文字春は俄かにぞっとした。
しかも叔父は「武士たるものが
妖怪などを信ずべきものでない」という武士的教育の感化から、一切これを否認しようと努めていたらしい。
しかも叔父は「武士たるものが
妖怪などを信ずべきものでない。