殊に救いのないような
孤独と深い憂悶の中に捉われている今の彼である。
当時私のこれらの短篇小説が一貫してシャニムニ追ひもとめ、くひさがつてゐることは、
孤独といふこと、虚無といふこと、そして淫楽に対する絶望だ。
なぜなら、坊主の勉強から脱け切つてゐたわけではない私にとつて
孤独といふことは尚主要な生活態度であり、私はあまり広い交游を好んでゐなかつた。
孤独と云つても、このくらゐ徹底した
孤独はなかつた。
あるいはまた名高い給
孤独長者も祇園精舎を造るために祇陀童子の園苑を買った時には黄金を地に布いたと言うことだけである。
だから、私は今私を
孤独と放浪へ追いやった私の感受性を見極めてこれを表現しようと思っている。
こうしたことは療養地の身を噛むような
孤独と切り離せるものではない。
ゴチック建築のなかを辿ってゆくときのような、犇ひしと迫って来る静寂と
孤独とが感じられた。
孤独というものが感覚的に来るのは、こう言う時だろう。
と、涯しのない緑の平原と雲の色が、放浪の
孤独とやるせなさにむせんで見えた。