浪打際は綿をば束ねたような白い波、波頭に泡を立てて、どうと
寄せては、ざっと、おうように、重々しゅう、飜ると、ひたひたと押寄せるが如くに来る。
汽車の係員たちまでがこの白痴の少年には好意を
寄せて無賃で乗車さす任意の扱いが出来たというから東北の鉄道も私設時代の明治四十年以前であろう。
しかもその場所は人気のない海べ、——ただ灰色の浪ばかりが、砂の上に
寄せては倒れる、いかにも寂しい海べだったのです。
それが不思議にも二年つづいたので、渡辺綱が鬼の腕を斬ったのから思い
寄せて、誰が云い出したとも無しに羅生門横町の名が生まれたのである。
そんな時の私達は、きっと、襟をかき合わせ、眉を
寄せて寒空を見上げているに相違ありません。
しかれども読者諸彦のしばしば書を
寄せて過当の奨励をなすもの往々これあるにより厚顔にもここにふたたび印刷職工を煩わせり。
ギイギイと落ちついた櫓音と共に、おどろきもせず慌てもせず漕ぎ
寄せて来る気勢でした。
ごろりと轉げて大の字なり、坐團布を引
寄せて二つに折て枕にして又も手當次第の書を讀み初める。
舟とどめて互いに何をか語りしと問えど、酔うても言葉すくなき彼はただ額に深き二条の皺
寄せて笑うのみ、その笑いはどことなく悲しげなるぞうたてき。