こゝに一例をとつて、われ/\の国の、村の生活・家の生活のつきとめられる限りの古い形の幾分の俤を描くと共に、日本文学発生の姿を
とり出して見たいと思ふ。
「いや、もう、お話にならねえ」と、治六は帳場の前にぐたりと坐って馬士張りの煙管を
とり出した。
手拭で目のふちを拭いてしまって、お絹は更に小さいふところ鏡を
とり出して、まだらに剥げかかった白粉の顔を照らして視ていた。
其を
とり出して具体化する事が、批評家のほんとうの為事である。
「その時蜑崎照文は懐ろより用意の沙金を五包み
とり出しつ。
いまそれを一つずつ想い出すままに
とり出して並べてみるのも何かの役に立てばと考えるので……
時候の挨拶をすませて後、丸佐の主人が
とり出したのは紙包みのお金でございます。
そしてもう三十年近くの間、誰ひ
とり出て来て、そういう勝手な客たちを追い払ったり、彼らの荒した跡を修繕したりする者もなかった。
この散歩路のほうに向って入口のついた、小粋な構えの小さな家が一軒あったが、折しもその家から若い女がひ
とり出て来た。