形見としてその二つ三つを取納め、余は引き裂きて庭に持ち出で、涙の種をことごとく烟とす。
田道の家来が主人の手纏を取つて田道の妻に持つてゆくと、妻はその
形見を胸に抱いて自殺し、この夫妻の死はひろく世間から惜しまれ手厚く葬られた。
維新の当時、おてつ牡丹餅は一時閉店するつもりで、その
形見と云ったような心持で、店の土瓶や茶碗などを知己の人々に分配した。
こうして惨めな、みにくい姿を晒しながら、黒い眼玉ばかりを
形見に残して、かれらの白いかげは大江戸の巷から一つ一つ消えて行った。
四十を越したお宗さんは「
形見おくり」を習つてゐるうちに真面目にかういふことを尋ねたりした。
長いことお三輪が大切にしていた黒柿の長手の火鉢も、父の
形見として残っていた古い箪笥もない。
其トランクは、彼女の養父の、今は亡くなつた相場師の彼女へ遺された唯一の
形見だつた。