彼処を通抜けねばならないと思うと、今度は寒気がした。
而してその時私は考へた、都会は美くしいが実に怖ろしい処だ、
彼処には黄金、酒、毒薬、芸術、女、凡てが爛壊に瀕してゐる。
松川
彼処に住ひてより、別に変りしこともなく、二月余も落着けるは、いと珍しきことなりと、近隣の人は噂せり。
それから雑役の用務員さんの方で
彼処にいる三人を加え、全部で十人の宿直でした。
七月の十五日は殊に魂祭の当日なれば、夕涼より家を出でて独り
彼処に赴きけり。
兇賊烏啼天駆は一日も早く絞首台へ送らざるべからず、而して今日彼を
彼処へ送り得る能力ある者は、僕猫々を措いて外になし」と。
久米と芥川と僕とで、晩食を共にした後でもあったろうか、湯島天神の境内を通るとき、
彼処に出ている一人の易者に冗談半分に見て貰ったのである。
私がね、今
彼処の横手をこの路へかかって来ると、溝の石垣の処を、ずるずるっと這ってね、一匹いたのさ——長いのが。
「あああの、越中の蛎波へ通う街道で、此処に来る道の岐れる、目まぐるしいほど馬の通る、
彼処だね。
