「何とか云う旧帝国の侯爵が一人、イイナの
あとを追っかけて来てね、おととい東京へ着いたんだそうだ。
その
あとには唯凍て切った道に彼等のどちらかが捨てて行った「ゴルデン・バット」の吸い殻が一本、かすかに青い一すじの煙を細ぼそと立てているばかりだった。
切り髪にした女隠居が一人、嫁入り前の娘が一人、そのまた娘の弟が一人、——
あとは女中のいるばかりである。
同時にまた博奕打ちらしい男も二三人の面会人と一しょに看守の
あとについて行ってしまった。
そう答えた店員は、上り框にしゃがんだまま、
あとは口笛を鳴らし始めた。
あとは唯、何人かの弟子たちが皆息もしないやうに静まり返つて、或は右、或は左と、師匠の床を囲みながら、限りない死別の名ごりを惜しんでゐる。
その
あとで、また蓄音機が一くさりすむと、貞水の講談「かちかち甚兵衛」がはじまった。
それから、松根さんの合図通り、
あとの人に代わって、書斎の外へ出た。