併し、其さへ直ぐに
忘られて、唯残るは、父祖の口から吹き込まれた、本つ国に関する恋慕の心である。
遠目には磯の岩かと思はれる家の屋根が、ひとかたまりづゝ、ぽっつりと置き
忘られてゐる。
一昨年半僧坊の石段で、叢から蛇が飛び出た時の不吉な思ひが今だに
忘られず、この度はお詣りは止した。
先生はいつもフランネルのシヤツを着られ、シヨオペンハウエルを講ぜられしが、そのシヨオペンハウエルの本の上等なりしことは今に至つて
忘るること能はず。
予はこの画の如き数分の彼女を、今に至つて
忘るる能はず。