この際、
忙中寸暇を割いて、座つて落ち付いて見る、場所はあまり物を置かない庭向きの座敷がいい、新茶の一椀を啜つて見るのもいい、これは決して贅沢でも閑人でもない。
忙中に読んで何等感興を覚えないものを間中に読んで感興を覚えることがあり、得意の時に読んで快とするものを失意の時読んで不快に感ずることもある。
今や、天地爽麗の季に乗じて、新茶一椀の服涼は、
忙中僅に許さるべき自然の贈りものではあるまいか。
斯ういふ事を語るには自ら順序があるであらうが、私は新聞記者であつて、
忙中一轉氣のつもりで斯樣なものを書くのであるから、組織立つた記述は出來ないかもしれない。