そこで東屋所長とわたしと三田村
技手の三人は、老看守の後につづいて、うす暗い階段室に入った。
技手は思い返した様に、気軽に青年の肩を押しながら裏口へ出た。
技手は手袋を嵌めた両手を、自動車の柁機に掛けて、真つ直ぐに馭者台に坐つて、発車の用意をして待つてゐる。
現に私が話を聞いた青森縣東津輕郡の郡農會の
技手は、自慢の長髯をしごきつつ、喜色滿面に溢れて、平年作の二割増收の豫想を壇上から繰返してゐた。
それがこの山の上の港へ漂い着いて、世離れた測候所の
技手をして、雲の形を眺めて暮す身になろうなどとは、実に自分ながら思いもよらない変遷なのである。