某綿糸屋の若旦那は、朝、食堂へ出るのに
折目のついたモーニングを着、夜、食堂へ出るのに、よれよれの普段着の日本服に袴を穿かないのだから面白い。
男もので手さえ通せばそこから着て行かれるまでにして、正札が品により、二分から三両内外まで、膝の周囲にばらりと捌いて、主人はと見れば、上下縞に
折目あり。
東方を顧れば、箱根足柄にかぶさる雲から、雨脚のような光線が流れて、大裾野は扇の地紙のように、森や小阜の
折目を正しくして、黄色に展開している。
汗ばんだ猪首の兜、いや、中折の古帽を脱いで、薄くなった
折目を気にして、そっと撫でて、杖の柄に引っ掛けて、ひょいと、かつぐと、
紳士は背のすらっとした、どこか花車な所のある老人で、
折目の正しい黒ずくめの洋服に、上品な山高帽をかぶっていた。
それを、茶の小倉の袴が、せっせと
折目をつけては、行儀よく積み上げている。