彼はその箱をハンカチーフと一緒に押し込んで置いて、ついそのままに忘れていると、蟹は箱の中からどうしてか
抜け出して、おそらく縁伝いに隣りへ這い込んだのであろう。
それは、関の長者の妹娘が、はした女一人を供に、親の家を
抜け出して来たのであつた。
美しい姉さんは、いつの間にか羽子板を
抜け出して枕元に座って、頬ペタの大きく凹んだ処を押えてシクシク泣いています。
なぜ月は、あのように薄気味のわるい青い光を出すのだろう、どう考えたって、あれは墓場から
抜け出して来たような色だ。
僕は「泣いたって駄目だよ」と涙を叱りつけながら、そっと寝床を
抜け出して本棚の所に行って上から下までよく見ましたけれども、帽子らしいものは見えません。
それが髪をまん中から割って、忘れな草の簪をさして、白いエプロンをかけて、自働ピアノの前に立っている所は、とんと竹久夢二君の画中の人物が
抜け出したようだ。
ある夜、主人はヴァイオリン弾きの老爺が、突然無断で邸内から
抜け出し、何処とも知らず、逃げ失せたのを知りました。
ジガ蜂は引つかかつたなと思ふと、ぶるんと激しく足ぶるひして次の瞬間にはもう器用に
抜け出して、そんなことがあつたともいはぬやうな顔で高い夏空さして飛んで行つた。
しかし私はできればそういうところから早く
抜け出したいと思つていたし、また彼の才気といえども決して天啓のごとく人の心を照すような深いものではなかつた。
ぜひなく墓掃除をすましたあとで、二三日の暇を見て
抜け出して行くのであった。