この人物、まだ若い男かというとそうではなく、二等兵で戦争に行って
捕虜にもなってきた山田虎二郎という当年三十八のいいオッサンなのである。
木枯国で
捕虜となった一日本人市民が、その地の病院勤務を命ぜられ、雑役夫として働きつつある物語である。
朝鮮戦線からのニュースでも、彼らの軍規は見るべきものがあり、
捕虜に対する取扱いなどは紳士的ですらあるように見える。
そのうちに日が暮れかかると、草むらから幾人の男があらわれて、有無をいわさずに彼を
捕虜にして牽き去った。
××汽船会社支店長——アルザス生れの仏蘭西人——青島で日本軍の
捕虜になつた男——独身。
徒らに賣卜者、觀相者、推命者流の言の如き、『運命前定説』の
捕虜となつて、そして好運の我に與みせざるを歎ずるといふが如きことは爲すべからざる筈である。