これを右手の
掌中に持ちかえて、右側の生徒の机の下からそれを拾いあげたようなフリをする。
私がこの無惨な光景をノートに取っている間、喬介は大胆にも直接死体に手を触れて
掌中その他の擦過傷や頸胸部の絞痕を綿密に観察していた。
青銀色の滑らかな肌を、鈎先から握った時、
掌中で躍動する感触は、釣りした人でなければ知り得ない境地である。
人間の運命が、
掌中の紋様に現われるなど云うことは考えられないことであるが、しかし人間の身体についているものだけに、まだ易などよりは、信じられる。
頼朝以来武家に奪われていた政権が、久し振りで自分達の
掌中に転がり込んだのであるから、有頂天になるのは無理もないが、余りにも公卿第一の夢の実現に急であった。
渠等が慈愛なる父母の
掌中を出でて、其身を致す、舅姑はいかむ。
かくて政権は確実に北条氏の
掌中に帰し、天下一人のこれに抗議する者なく、四民もまたこれにならされて疑う者なき有様であった。
蜘蛛の圍の幻は、却て鄙下る蚊帳を凌ぎ、青簾の裡なる黒猫も、兒女が
掌中のものならず、髯に蚊柱を號令して、夕立の雲を呼ばむとす。
然して國主が
掌中の民十萬、今はた何をなしつゝあるか。