家は重門尽く
掩ひ、闃としてどこにも人かげは見えない。
処はジル湖の大部を占める、榛の林に
掩はれた、平な島の岸である、其傍には顔の赭い十七歳の少年が、蠅を追つて静な水の面をかすめる燕の群を見守りながら坐つてゐる。
長い間、剃刀を当てない髯がぼうぼうとしてその痩せこけた頬を
掩うている。
むかし、むかし、大むかし、この木は山谷を
掩った枝に、累々と実を綴ったまま、静かに日の光りに浴していた。
落葉樹が寒風に嘯き早春の欅の梢が緑の薄絹に
掩われるのも、それは皆すべて植物の生理的必然の作用に他ならない。
ただ新聞記者の業に在る者潜心校閲の暇なく、新聞紙を切り抜きたるままこれを植字に付したるは醜を
掩うあたわざるゆえんなり。
雜木の小丘を截つて附けた坂としてはわたりが長く隨つて茅萱野草に
掩はれた一方の崖下は深くて長かつた。
手摺窓の障子を明けて頭を出すと、椎の枝が青空を遮って北を
掩うている。