彼等は店の前へ来ると、
暖簾の文字を眺めて青年風の沈鬱さで言う。
するとその最中に、中折帽をかぶった客が一人、ぬっと
暖簾をくぐって来た。
この伊勢屋は旧い店で、
暖簾に柘榴を染め出してあるので、普通に柘榴伊勢屋。
丸井はそこらでも旧い
暖簾の店で、ゆうべ四ツ半(午後十一時)頃に表の戸をたたく者があった。
九曜星の紋のある中仕切りの
暖簾を分けて、袂を口角に当てて、出て来た娘を私はあまりの美しさにまじまじと見詰めてしまった。
破れたる壁に舞楽の面などをかけ、正面に紺
暖簾の出入口あり。
暖簾の色、車の行きかひ、人形芝居の遠い三味線の音——すべてがうす明い、もの静な冬の昼を、橋の擬宝珠に置く町の埃も、動かさない位、ひつそりと守つてゐる……