ドイツの
暗澹たる雪空をのがれ、太陽をもとめて伊太利へ馬車を急がせたゲーテは、然し恐らく太陽を異国の空のものとしてもとめてゐたとは思はれない。
とわが友は
暗澹たる顔をさらに深く曇らせてゲヂゲヂを払ふもののやうに觴を振り廻すのだ。
従つて小説家は彼自身
暗澹たる人生に対することも常人より屡々ならざるべからず。
蒼空の下を、矢輻の晃々と光る車が、駈けてもいたのに、……水には帆の影も澄んだのに、……どうしてその時、大阪城の空ばかり
暗澹として曇ったろう。
単に西洋のものは「西洋的」としてこれを忌むといふ風であると、われわれの考へるいろいろな方向が
暗澹として来る次第で、こゝにも十分な反省が必要であります。
定紋の付いた暖簾の間から見える家の内部までが、どれもこれも
暗澹として陰鬱に滅亡して行くものの姿を、そのまま示しているように僕には思われたのです。
暗澹たる前方には、この戦隊の旗艦第七潜水艦が、同じように灯火を消して前進しているはずです。
特に晩年の放縦と驕奢には、政治家として落第であった彼の、ニヒリズムが
暗澹たる影を投げて居る。
が、明日の糧にも気心を配る女房の顔を見れば、釜貞も人間、只
暗澹として首を俯する他はなかつた。
兎に角万事が切迫してゐて、
暗澹たる力があつて、とても日本の作家なんぞには、一行も書けないやうな代物だつた。