端の歩突きを考えていた野心的な
棋師はほかにもあったに違いない。
私が呉氏の大石を攻めはじめてからの彼の態度が、真剣で、その闘志や入念さ、
棋院の大手合の如くであり、一匹の虫を踏みつぶすにも、虎が全力をつくすが如くである。
最初は、病気の経過のことから
棋友の消息、遷り行く秋の眺めのことなど話してゐたが話題は次第にこのごろ大きな見だしで報ぜられてゐる日華事変のことに移つて行つた。
馬券の奥堂に参ずるは、なお剣、
棋の秘奥を修めんとするが如く至難である。
とすると、狂人の
棋法のほうがすぐれているのではなかろうか? と思えるのであった。
將
棋さすにも、王を一方にとぢこもらせて、金將、桂馬、香車、二三の兵にて守れば、一寸完全なるやうなるも、こは、案外に、もろく敗る。