言うまでもなく毛人とは蝦夷の事で、東方において殆ど唯一の
毛髪鬚髯の濃厚な人種であることからこの名を得たのであった。
僕の如く敝衣褞袍を身にまとひ、
毛髪蓬々、肩に風を切つて歩く人種を、京都では一列一体に絵師さんと呼び、さてこそ先生である。
かりに諸君、一撃を加へて彼の
毛髪を強奪せりと想像し給へ。
令嬢は画布越しに少年のもぢやもぢやした
毛髪を視凝めてゐたが、次第に和やかな落付が湧いてきた。
かりに諸君、一撃を加えて彼の
毛髪を強奪せりと想像し給え。
而して妹の頭には祖先の血によりて成りたる
毛髪の外、何の有るなし。
近づくままに顔を見るとそれはもう末期にちかい癩患者で、眼も鼻も
毛髪もまったくなく、口と鼻腔だけが無気味な闇黒をのぞかせていた。
よく気をつけてみると、
毛髪の下の皮膚が、うすく襞状になっているのが見えないこともないが、それが見えたとて、誰もそれを傷痕と思う者がないであろう。