もしも私の著作が、世相に悪影響を及ぼすものと断ぜられて、
浮薄なる情痴作家と裁かれるなら、それはそれでよろしい。
しかれどもこれ必ずしも個人の
浮薄と惰弱とより来たると言うべからず。
それや、文学者の中には、物事を真面目に考へ、真面目に云ひ、大いに軽佻
浮薄な世人どもを反省させる人もあつていゝ。
又この憂鬱な影の為に我我の
浮薄を戒めるのであらう。
左れば文人の恋愛に対するや、須らく厳粛なる思想を以て其美妙を発揮するを力むべく、苟くも卑野なる、軽佻なる、
浮薄なる心情を以て写描することなかるべし。