私の見たのはそれだけだったが、死人の靴も時計も、こんなふうにして、この二人の若者は
淡々とつまみあげて、投げだしたり、ポケットへ入れたりしたろうと思う。
春の円山、三人の桃割娘が赤毛氈に並んで所望される席画を
淡々と描いてる風景など、昔を今になすよしもがなです。
まして侯爵の笑ひは
淡々として水に落ちる雫のやうだ。
「気の毒なことじゃのう」博士の声は水のように
淡々として落付いていた。
その橇の鈴の音が脚本を讀んだ時からわたくしの胸に沁み込んでゐたので、特に氣をつけてゐたが、舞臺の上ではその部分が平々
淡々の中に終つてしまつた。
水に至っては、
淡々として無味、何人も手を放すことの出来ない必要品であるごとくに、彼の通信は待ちこがれる水であったのである。
あたかもすでに形あるものの上をなぞらえるがごとく、極めて
淡々と無造作に描きわけてゆく。
しかるに壮年の人よりこの涙を誘うもののうちにても、天外にそびゆる高峰の雪の
淡々しく恋の夢路を俤に写したらんごときに若くものあらじ。