○「おなかが
減いて家へ帰る電車がなかなか来ないときだけ、ちょっとセンチになるわよ。
『双葉フアンは、彼の目方が前場所に比べて三貫目
減つてゐたところに敗因があるといふ。
彼が美しい女優を妻にしなかつたら、仏国戯曲史から少くとも三つの名作が
減つてゐたらう。
それゆゑ大きい方は今年数へ年五つになるわけだが、満で算へると年が
減つて三つになり、小さい方は一つといふことになる。
私等は初めは小声でいろいろ雑談を始めたが、時が段々経つに従つて口数が
減つて行き、そこに横になつてまどろむものもあつた。
嗚呼天地味ひなきこと久し、花にあこがるゝもの誰ぞ、月に嘯くもの誰ぞ、人世の冉々として
減毀するを嗟し、惆として命運の私しがたきを慨す。
歴史の頁数は年毎に其厚さを加ふれど、思想界の領地は聊爾も
減毀せらるゝを見ず。
彼は情熱を余りある程に持ちながら、一種の寂滅的思想を以て之を
減毀しつゝあるなり。
私の持つているこの象徴的なファンは手紙などはくれないが、そのかわり増えたり
減つたりは決してしない。