此処には、日常生活の些事の中にも
滲透して、戯れながらその味を吸ひ取りその美を掬い上げることの出来る芸術家のこゝろがある。
これがまた、現代の文化の要素が国民生活の中へ十分に
滲透しないといふ、たゞいまの状態の原因ともなつたのであります。
作家がこうも猫の眼玉のように筆法を変えていては、とても自己本来の内心に深く
滲透した芸術を創り出すということは出来ません。
その熱意が幻想に入り、その精緻が
滲透して暗示となるとき、そこに感覺の交徹による象徴主義が生れるのである。
そこは下鴨神社のすぐ側で、高野川の河水が絶えず
滲透してゐる低地なので、少し土を掘ると恐らくかうした清泉が自然に迸り出てゐたのであらう。
物質の不可侵性を無視して風景のなかに
滲透してゆく、若しくは同一の空間に二個の系統の風景の共存する。
この作が凡百の軽文学を遥かに抜いているのは、全篇の構成から措辞の末に至るまでに
滲透している作者の芸術的感覚と手腕とによってであろう。