「すと」「すと」花にたまった雨の澪の砂に
滴る音を聴いていると夢まぼろしのように大きな美しい五感交融の世界がクッションのように浮んで来て身辺をとり囲む。
——小村さんは一旦外へ出たが、出ると、すぐ、横の崖か巌を
滴る、ひたひたと清水の音に、用心のため引返して、駅員に訊いたのであった。
ひたひたと木の葉から
滴る音して、汲かえし、掬びかえた、柄杓の柄を漏る雫が聞える。
噴きあげは真珠の雨のやうなうつくしい音を立てて
滴るのである。
と思うとその元禄女の上には、北村四海君の彫刻の女が御隣に控えたベエトオフェンへ
滴るごとき秋波を送っている。
……蝙蝠傘を翳してるのに、拭いても拭いても顔から雫が
滴るのですものなあ。
古市の驛を通り過ぎたところには、どつちを向いて見ても
滴るやうな濃い緑ばかり。
定めし少女も小生と同様、桜の花や花崗岩や潮の
滴る海藻を想ひ居りしことと存じ候。
あれ、聞け、雨乞の聲を消して、凄じく鳴く蝉の、油のみ汗に
滴るや、ひとへに思ふ、河海と山岳と。