彼はある朝早く、
濃い靄に包まれている街の中を工場地帯に向けて歩いていた。
痕を残さない、
濃さと淡さの碧が、谷から舞い上る霧のほむらに、ぬらりと光る。
が、彼女はその上に高い甲板を見上げたまま、紅の
濃い口もとに微笑を浮かべ、誰かに合い図でもするように半開きの扇をかざしていた。
口髭の
濃い、顋の四角な、どこかで見た事のあるような男だが、どうしても思い出せない。
殊にこの川に棲んでいる鯉は紫鯉というので、頭から尾鰭までが
濃い紫の色をしているというのが評判でした。
すでに雨は止み、波頭も低まって、その轟きがいくぶん衰えたように思われたが、闇はその頃になるとひとしおの
濃さを加えた。
私たちの性格は両親から承け継いだ冷静な北方の血と、わりに
濃い南方の血とが混り合ってできている。
相手の将校は、頬の日に焼けた、眼鼻立ちの鮮な、
濃い口髭のある男であつた。
昼過ぎになると戸外の吹雪は段々鎮まっていって、
濃い雪雲から漏れる薄日の光が、窓にたまった雪に来てそっと戯れるまでになった。
