京都の伏見の
火薬庫前の計理士の二階に住んでゐたとき、この時ばかりはいさゝか参つた。
あの、
火薬庫を前途にして目黒へ通う赤い道は、かかる秋の日も見るからに暑くるしく、並木の松が欲しそうであるから。
そうして、その
火薬庫付近の木立や草むらの奥には、昼間でも狐や狸が時どきに姿をあらわすということを聞いていた。
カーキ色の兵隊を載せた板橋
火薬庫の汚ない自動車がガタ/\と乱暴な音を立てて続いて来るのに会ふこともあつた。
そうして、その
火薬庫付近の木立や草むらの奥には、昼間でも狐や狸がときどきに姿をあらわすということを聞いていた。